十五の石の物語




昨日は予想していた通り、何の手掛りも得られなかった。
期待はしてなかったとはいえ、やはりジネットの落胆は大きかった。
次の日もジネットは朝から町へでかけたが、声をかけても話さえ聞かず、邪魔だ!と言わんばかりに冷たく去ってしまう者が何人もいた。



(……やっぱり、こんなに離れてるんですもの…暗き森のことを知ってる人なんていなくて当然だわ…)



原因は暗き森が遠いことばかりではなかった。
探している人物の情報が少なすぎるのだ。
どんな風貌かはもちろんのこと、名前すらもわかっていないのだ。
ジネットだけではなく、ジネットの父親も「案内人」には会ったことがないのだから…
さりとて「緑色の髪で緑の肌で」…なんてことも言えるはずもなく、ジネットは途方に暮れた。



(…せめて、お名前だけでもわかっていれば…)

考えれば考える程、ジネットの気持ちは暗く沈んだものになった。



(たった二日でこんなに落ち込んでしまうなんて、私ってなんて情けないのかしら…頑張らなくちゃ…)

そう思いながらも、ジネットはとても心細い気持ちになっていた。
一人でいるのがいたたまれない。
そんな時、彼女の脳裏に浮かぶのはヴェールの優しい笑顔だった。



(私ったら何を考えているのかしら…
私には大事な使命があるというのに…)

打ち消そうとしても、ジネットの脳裏に浮かぶのはヴェールのことばかり…
ヴェールにすべてを打ち明けてしまえたら、どんなに楽になれることだろう…



(…でも、そんなことをしてしまったら、きっともう私を一緒に連れていっては下さらないわね…)

打ち明けられるはずなんてない…
でも、今はとにかくヴェールに会いたい。
一人でいると不安に押しつぶされそうになってしまう…

ジネットは、高ぶる感情が押さえ切れずに、三人を追い、鉱山への道を歩き出していた。
< 240 / 414 >

この作品をシェア

pagetop