十五の石の物語




ジネットには申し訳ないと思ったが、うかつに急いで昨日のようなことになっては困る。
私達は無理のないペースでゆっくりと進むことにした。
滑りやすい沢や岩場が多いため思った以上に体力を消耗する。
暗くなり始めたら進むのをやめ、早めに休む。
そのせいか、時間はかかったが今回はサリーもけっこう元気な状態で進むことが出来た。



「多分、この山ですよ。」

「やっと着いた~!」



ようやく私達は採掘場のある山に着いた。
後はこの山にある採掘場所を探せば良いだけだ。



「はぁ~…やっとここまで来たね。
聞きしに勝るひどい所だよ、まったく。」

「いくら変わった石が出るという噂があろうとも、こんな所までわざわざ来ようと思うのは物好きだけだろうな。
その男が偏屈だと言われるのも、もっともな話だな。」

「レヴとどっちが偏屈だろうね!」

「私は偏屈等と言われたことはない。」

「そりゃあ、本人には言わないさ!」

そういうと、サリーはおかしそうに声を上げて笑う。
慣れたことだとはいえ、やはり苛々とした気持ちにさせられる



「サリーさん、その方の名前は思い出されましたか?」

おそらく、ヴェールはそんな私の気持ちを察し、話をそらそうとしてくれたのだ。



「それが、思い出さないんだよ。
名前っていうか、なんだか変な呼び名みたいな…う~ん…
あの時はずいぶん、酔っぱらってたからなぁ…」

「だから、飲みすぎるなといつも言っているのに…」

「あの時はレヴが飲んで来いって言ったんだからね!」

「まぁまぁ…別に名前がわからなくとも、採掘場所さえわかれば良いのですから…
さぁ、早く探しに行きましょう!」

「ヴェールが名前のこと、聞いたくせに…」

サリーのつぶやきを聞こえないふりをして、ヴェールはさっさと先を歩く。
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