十五の石の物語
「ジェムストーン」と呼ばれる男は噂とは裏腹に、明るく陽気な印象の男だった。
ジネットが滑り落ちた斜面を登らなくとも、違うルートがあるらしく、それも、このジェムストーンが切り開いて作った道だとのことだった。
階段のようなものまで作られているため、とても歩きやすい道だ。

ジェムストーンは偏屈などではなく、話し好きなごく普通の青年だった。
彼は歩きながらジネットにいろんなことを話した。
父親の影響で幼い頃から石が好きになり、最初は石を売り歩く商売をしていたが、そのうちに珍しい石を求めて採掘をするようになったという。



「俺の両親はもう年だし、流行りもしない宝石店で修理ばっかりやってるのが可哀想でな。
大きな家を建てて、仕事なんてしなくても楽に暮らしていけるようにしてやりたいのさ。
この山には珍しい石があると聞いた。
その石は金銭的にはたいした価値はないらしいんだが、石ってのは金銭的な価値だけじゃないんだ。」

「……といいますと…?」

「石には昔から不思議な力が宿っている。
それを持ってりゃ病気が良くなるものや、性格に影響を与えるもの…
俺が探しているのは幸せになれる石だ。」

「幸せになれる石…
翡翠とかですか?」

「いや…翡翠も悪くはないがもっともっと大きな力を持った魔法の石みたいなもんだ。
それをみつけりゃ、きっと俺は大金持ちになれる。
そうしたら両親にも贅沢で幸せな暮らしがさせてやれるんだ!」

男はそう言って、瞳を輝かせた。
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