十五の石の物語




「ジネットさん!どうしてここへ?!」

なんと、火の傍にいたのは町にいるはずのジネットだった。
私が驚いたのと同様に、ジネットも酷く驚いたような顔をして振り向いた。



「ヴェールさん…!!」

ジネットが見ていたのは私ではなくヴェールだったようだ。
彼女は突然、ヴェールに近寄りその身体に抱きついた。



「ジネットさん…どうなさったのです?」

「あ…私ったら何てことを……ど、どうもすみません!」

ジネットは慌てて身を引き目を伏せた。



「あ~あ、ヴェールはモテモテだね!
この前はネリーに抱きつかれ、今日はジネット…
よっ!色男!」

「……ネリーさん…?」

「そうだよ。とっても綺麗な人でさ。
ヴェールとはかなり良い感じなんだよ、ね!」

「馬鹿なことを言わないで下さいよ。」

「照れなくても良いじゃん。
それに引き替えレヴと来たら……」

「つまらないことを言うな。」

ジネットはサリーの一言でとても気落ちしたように見えた。



(ネリーさんとヴェールのことが気になるのか?
しかし、なぜ?
ジネットさんには心に決めた大切な人がいるのではなかったのか?
突然、心変わりをしたとでも言うのか?)

私はジネットの様子を見守りながら、そんな疑問に首を傾げた。



「ジネットさん…」

ジネットは私の声が聞こえなかったかのように、呆然と立ち尽くしたまま身動きひとつしない。



「ジネットさん!」

「あ…は、はい。
何ですか?レヴさん。」

ジネットはまるで夢から覚めたように、二度目の呼び掛けにようやく返事をした。



「ここへはどうして?
町で何かあったのですか?」

「いえ…そうではないのです。
ただ、探していた情報がまるでみつからなくて…それで、つい……」

「そうだったのですか。
何事もなかったのなら良いのですが……しかし、あなたは私達より後に発たれたと思うのですがどうしてこんなに早くにここへ?」
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