十五の石の物語
「それが……あなた達を追ってこちらへ来る途中で、ちょうど運良くジェムストーンさんにお会いしまして…」

「それだ!!」

サリーが突然大きな声をあげた。



「何が、それなのだ?」

「忘れてた名前だよ!男の名前は『ジェムストーン』だったんだよ。」

「俺がどうかしたかい?」


振り返るとそこには水汲みから帰ったジェムストーンが立っていた。



「この人達がお仲間なんだな?」

「ええ、この方達もつい今しがた、ここへ来られた所なのです。」

「そうかい。
そりゃ良かったな。
今夜は賑やかになりそうだな。」

夕食は一応すませてはいたが、せっかくだからということで、私達もなんとなく食べ物を口に運んだ。
だが、相変わらず、ジネットの食は細い。



「あんた、もう食べないのかい?」

「お気になさらないで。
私はもともと少食なんです。」

「あたしなんかとは違って、ジネットはお上品なんだよ。」

サリーのいやみに、誰も何も言わなかった。

ジネットの何かが、サリーのカンに触るらしいことは私も気づいてはいたが、しかし、それを咎めるとまたややこしいことになりそうだと考え、私はあえて聞かないふりを決めこんだ。



「それにしても、大変な場所だな、ここは……」

「そうですね。
あの地図でよくたどり着けたものですね。」

私とヴェールは、他愛ない会話を交わす。



「街の噂では偏屈な男だって聞いてたけど、全然そんなことないね。
これならレヴの方がずっと偏屈だね。」

私達の隣では、サリーとジェムストーンが話していた。



「そうか。
俺は思った以上に、評判が悪いんだな。
じゃ、これからは評判通りにもっと偏屈にならないと申し訳ないな。」

「そうだね!
うちのあの兄さんの真似をしてたら、すぐに立派な偏屈になれるよ。」

そんなつまらない冗談に、二人は大きな声で笑う。

私はヴェールと話しながら、二人の話は聞こえない振りをして平静を保った。
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