十五の石の物語
「以前、西の塔の魔女の正体を見てやろうと、一晩中木のそばで待ってた若者がおったそうなんじゃが、西の塔の魔女はいつまで待っても現われなかったそうじゃ。」

「だけど、ちゃんと返事は来てたんだよ。」

「……なるほど。」

よくありがちな話だと思った。
青年はきっとほんの少しの間、眠ってしまったのだろう…
あるいは誰かが面白がって作りあげた話が、だんだん大きくなっていったということだろう。

見ず知らずの人間にさえもこんなにも親身になってしまうサリーやピェールのような人間なら、こういう話も素直に信じてしまうものだ。
彼らは善人ゆえになんでも簡単に信じてしまうのだ。



「あたしが手紙を書いてあげるよ!」

ここまできたら、もう断ることは出来ない。
彼らは善意の塊なのだから。
そう思い、私は、彼女の好意を受け入れることにした。



「……ありがとう。よろしく頼むよ。」

私がそう言うと、サリーは嬉しそうな顔で頷いた。



「レヴさん、今夜はうちに泊まっておいきなさい。」

気が付けば、知らぬ間にずいぶん遅い時間になっていた。

彼らは本当に善い人達だった。

私は、質素だが温かい夕飯をふるまわれ、粗末なベッドを与えられた。
屋敷とはあまりにも違うものだったが、それでも彼らの善意のおかげでとても満ち足りた気分で私は眠りに就くことが出来た。
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