十五の石の物語
「そうじゃ。
貝の中にたまたま入った異物を、この貝は痛みをこらえながら自分の体内で慈しみながら大切に育てるんじゃよ。
もしかしたらこの貝は人間の母親よりも愛情深いのかもしれんなぁ…」

「へぇ…この貝ってそんなに優しい貝なんだ…」

「そうじゃよ。
だからこの貝は子供のお守りなんじゃよ。
他にも女が持つと優しくなれるとも言われておるぞ。」

「そっか。
じゃ、あたしみたいながさつな女でも、これを持てば少しは優しくなれるってこと?
さすがにあたしみたいな者じゃ無理かな。」

「そんな……サリーさんはがさつなんかじゃありませんわ。」

ジネットは、気を遣ったのか本心からか、サリーの言葉を否定した。



「良いってば。
がさつなのはあたし自身がよ~くわかってるんだからさ。
あんたみたいに上品で優しい女になりたいけど、なかなかそんな風にはなれない…
それで、なんとなくいつもイライラしてしまうんだ。
悪いのはあんたじゃないってわかってるのにさ……」

「サリーさん……」

「この娘さんの言う通りじゃ。
初めて会ってもわしにはわかるぞ。
あんたは口は悪いが心根は優しい娘じゃ。
あんたの目をみりゃ、そんなことはすぐにわかる。」

「おじいちゃん、ほめすぎだよ!」

「年をとるとな、いろんなことがわかるようになってくるんじゃよ。
もしも自信がないのなら、その貝をふだんから持つとええ。
きっと、おまえさんを優しい女に変えてくれるぞ。」

「この貝が、優しい女に……?」

サリーは、手に持った貝をじっとみつめた。



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