十五の石の物語
「取り柄というよりも…素晴らしい才能だな。
君の頭の中には、北極星も南の森も今いるここも、正しい地図が出来ているのだろうな。」

「森の中で方向感覚を失えば、それは最悪の場合、死に繋がります。
ですから、これは森で暮らしてきた私の本能のようなものなのかもしれませんね。」

説得力のあるその言葉に、サリーと私は同時に頷いた。



「それで、君の頭の地図によると、ここから東の村へは近いのか?」

「北極星から南の森への距離と同間隔だとすれば、そう遠くはありません。
だいたいの場所の見当はつくと思います。」

「場所の見当まで…!?
ならば、東の村は意外と簡単にみつかるかもしれないな。」

「良かったじゃないか、ヴェール!
森の民と会えるのももうじきだよ!
あ、その間、ジネットとは別行動だね。」

「そうなるな。
近くに大きな町でもあれば良いのだが…
そういえば、ジネットさんの方は何も進展はないのか?」

「進展も何も、探してる気配がまるでないよ。
ここんとこはずっと私達と一緒だしね。
お母さんを故郷に一人残して出てきたみたいなのに、その割りにはどうも真剣味がないっていうかなんていうのか……」

サリーは方をすくめ、呆れたような表情を浮かべる。



「きっと、何か、深い事情がおありなんでしょう…」

「その事情ってやつがまったくわかんないから、私達にも協力出来ないしね…」

「そうだな…
今の所は、そっとしておくしかあるまい…」

「で、他には何かわかったのかい?」

「……実は…」

「なんだい?」

「……いや…何でもないのだ。
今回わかったのは村についての情報だけだ…」

やはり言えなかった。
指輪のことで、サリーやヴェールに迷惑をかけたくはなかったから。



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