十五の石の物語
「では、私が聞いてきます。」

ヴェールは、いつの間にか人間を怖がらなくなっていた。
今のヴェールはどこから見ても普通の人間だ。
彼のことを森の民だなどと思う者は誰もいない。



「そうだな。地理については、彼に任せておけば間違いない。」

「確かにそうだね。
じゃ、あたし達は海にでも行ってようか。
ヴェール、話を聞いたら海に来てよね。」

「わかりました。」

私達は宿を出て、ヴェールは通りの方へ、そして私とサリーとジネットは浜辺の方へ足を伸ばした。



「ねぇ、レヴ……あんた、海って見たことある?」

「もちろんあるぞ。
バカンスの期間には、家族でよくでかけたものだ。」

「バカンス……
さすがはお坊っちゃんだね。
じゃ、海なんて珍しくもなんともないんだ。」

「珍しくはないが、海は嫌いではないぞ。」

ヴェールの帰りを待つ間、私達は思い思いに浜辺で時を過ごした。



「レヴ、ほら見て!」

サリーは貝殻を私の前に差し出した。



「ほぅ…これは黒蝶貝だな。」

「あんた、妙なことはよく知ってるんだね。」

「この貝はこのあたりにはあまりいないはずだが……」

不思議なことがあるものだと、私は頭をひねった。



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