十五の石の物語
「きっと、どこか遠くの海から流れ着いたんだね。
これを持ってると、優しい女になれるって、どこかのおじいちゃんが教えてくれたよ。」

「貝にもそういう力があるのか……しかし、サリーが優しい女性になるには、一つでは足りないのではないか?」

私のその一言で、サリーの目は俄かに吊り上がった。



「あぁ、そうだよ!
多分、百個でも足りないね!
あたしは特別がさつな女だからさ!」

サリーはぷいと顔を背け、砂浜を走り出した。



「レヴさんったら…」

「何か悪いことを言いましたか?」

「サリーさんにももっと優しくしてあげて下さい。」

「……そうですね。わかりました。」

サリーとはいつもこんな風なやりとりになってしまう。
私はもうそれが日常化してしまってはいるが、きっとジネットからすればきつい態度に見えたのだろう。
これからは少し気を付けよう…とはいえ、それも、サリー次第だが……

浜辺を歩きながら、私達は他愛ない話を交わした。
ジネットの探してる人物や家族の話題になると、決まって彼女は俯いて口を閉ざしてしまう。
やはり、余程深い事情があるのだろう。
まだそれを聞き出そうとするのは無理だと思う。
もっと、信頼関係を築いてからではないと無理だろう。

そんなことを考えながら浜辺でのんびりとしていると、手を振りながら駆けてくるヴェールの姿が私の目に映った。



「早かったのだな。何かわかったか?」

「はい。それほど大きな町ではないらしいのですが、採掘場の近くに町があるらしいですよ。
ジネットさんにはそこで待っていていただくことにしましょう。」

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