十五の石の物語




「ダニエル、すまん!」

シャルロが一枚の写真の前で項垂れる。
写真立ての中には穏やかな笑みを浮かべた一人の男性の写真が入っていた。



「今頃になって思いつくなんて遅すぎるよな。
おまえさんにはあんなに頼まれていたのに…
それがな、その人はちょっと悪いものに関わっててな…
それで、そっちに気を取られてしまってな…
本当にすまねぇ!!」



シャルロの友人、ダニエルは妻を亡くしてから日一日と弱っていった。
妻を亡くしたことは、それほど大きな悲しみだったのだ。
ダニエルは自分の命がもう長くはないだろうと予感していた。
それは辛いことではない。
愛する妻の元へいけることは、彼にとってはむしろ喜びでもあった。

しかし、ただ一つ気がかりなのは息子のこと…

彼は一人ぼっちでこの先、生きていけるのだろうか…?
妻に似て、緑色の髪と肌を持つ息子…

ダニエルは息子のことをいつも気にかけていた。

やがて、ダニエルは旅立った…
彼の息子は暗き森の案内人としてどうにか暮らしている。
彼は暗き森から出られることはないだろうが、暗き森にいる限りはきっと生きていける…
シャルロはそう思っていた。

ところが、ある時、風の頼りで「案内人」が暗き森からいなくなったということを聞いた。

シャルロはあわてて暗き森を訪ねてみたが、噂通りそこにはもう彼の姿はなかった。

彼は一体どうなってしまったのか…
シャルロは、ダニエルに対して罪悪感のようなものを感じた。



「俺がもっと気にかけていれば…な。
しかも、昨日は森の民と関わりの深い人に会ったっていうのに、彼のことを聞くのを忘れちまってた…
ダニエル…本当に許してくれよ…」

シャルロは、まるでダニエルがそこにいるかのように、心の底からの熱い想いを話しかけた。



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