十五の石の物語
ヴェールとジネットは、生けられた薔薇の花の前でなにかを話していた。



「これがロードナイト…!」

サリーは祭壇の前で、驚いたような表情を浮かべて立ち尽くす。
そして、恐る恐る手を伸ばし、ロードナイトの塊に触れた。

彼女にしてはえらく神妙な雰囲気で、サリーはロードナイトを愛しそうにみつめていた。
彼女の肩が震えているように見えたが、まさか泣いているのか…?



「サリーさん…どうかしましたか?」

「い、いや…なんでもないんだ……」

サリーはヴェールから素早く顔を背けた。
明らかにその様子はおかしい。



「お祈りをされると良いですわ。
私達はもうすませましたし、他には何もないようですから外で待ってますね。」

「あたしは何もお願いすることなんてないよ!」

そう言うと、サリーは、ヴェールとジネットと一緒に外に向かった。

私は、一人その場に残り、放心したように祭壇の前に立っていた。



「これが愛の石か……」

私はゆっくりと手を組み、祭壇のロードナイトに祈りを捧げる。



(……災いがふりかかるのなら、どうか私だけにふりかかりますように…
彼等や家族には何も悪いことが起こりませぬように…!)



今の私の願いはただそれだけだ。
石でも誰でも…どんな神でも良い……
どうか、その願いを叶えてくれ……!
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