十五の石の物語
「待たせた…」

「何か、お祈りして来たのかい?」

「……あぁ…」

「そっか。良かったね。きっと叶うよ。」

「レヴさん、このあたりは、とても気持ちの良い所ですから、少し散策していきませんか…?」

「…そうだな…」

薔薇の花は、洞窟のまわり以外には咲いていなかったが、そのあたりには木や花がとても多く、空気さえもがおいしく感じられた。



「本当に良い所ですね~…」

「そうだね。
ジネットはこういう場所好きだよね。
……ねぇ、ところでジネットはさっき何をお祈りしたのさ?
やっぱり例の人のこと?」

またサリーの悪い癖が始まった。



「もちろん、それもあります……
でも、それだけじゃありませんわ。」

「何?何?
他にはなにをお祈りしたのさ?」

「母のことや、皆さんのこと……その他にもいろいろですわ。」

聞きたがるサリーに、ジネットの口は重い。



「いろいろかぁ……」

「じゃ、ヴェール、あんたは?」

「私ですか?
私も……まぁ、いろいろですね。」

「何だい。二人共、いろいろ、いろいろ…って……」

「レヴさんは?」

「……私も……いろいろ…だな……」

「もうっっ!!」

サリーは子供のように頬を膨らませる。



日が暮れるまであたりを散策し、私達はゆっくりと宿に戻った。

けっこう歩いたはずなのに、この晩もまた私は食が進まず、あまり話す気分にもなれなかった。



「ヴェール、ちょっと飲みに行かない?」

「私はアルコールは……」

「いいから、いいから。」


サリーは気乗りしない様子のヴェールの背中を押し出すように、強引に外に連れ出した。
< 289 / 414 >

この作品をシェア

pagetop