十五の石の物語
「マダム、見ず知らずの私共にお心遣いいただき、感謝しております。」

「おやまぁ、こんな私をまだ『マダム』と呼んで下さる方がいらっしゃったとは……嬉しいこと…!」

婦人は幸せそうな笑顔を浮かべながら、私達を寝室に案内した。
ふかふかした気持ちの良いベッドは、横になるだけですぐに夢の世界へ誘おうとする。



(明日は、西の塔の魔女からどんな返事が届いているのやら…
それにしても、この家は、見かけと違って中は意外と広いのだな…
しかも、この広さで浴室が二つもあるなんて……)

考え事をし始めて間もなく、私は深い眠りに堕ちた。







明るい日差しと小鳥のさえずりで私は目を覚ました。
身仕度を整え食堂に行くと、婦人が朝食をテーブルに並べ始めていた。
まだ眠っているのか、サリーの姿は見えない。



「おはようございます、マダム。」

「おはようございます。
昨夜はよくお休みになられましたか?」

「おかげさまで、夢を見ることさえ忘れて眠りました。」

「それは良かったこと…」

婦人は手を停め、ゆっくりと頷いた。



「本当にありがとうございました。
あなたのおかげで助かりました。
このあたりは、何もありませんから、こちらに泊めていただけなかったら、昨夜は空腹を抱えたまま、野宿する羽目になっていた所です。」

「……レヴさん、別に恩にきせるわけではないのですが……実は、あなたにお願いしたい事があるんですが……」

「どんなことでしょう?私に出来ることでしたら、何なりとどうぞ。」

私達が話している所へ、サリーが息を切らせて駆け込んで来た。

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