十五の石の物語
「実は裏山にある薬草がほしいの。
裏山はああ見えてもとても険しくて、私の足では登るのは難しいんです。
今までにも何人かに頼んだのですけど、誰も聞いては下さらなかったわ。」
「そんなこと、なんでもありませんよ。
その薬草はどこにある、どんなものですか?
詳しく教えていただけますか?」
「まぁ、嬉しい。
道なりに進めばそこに辿り着けるから、迷うことはないでしょう。
頂上近くまで登ると、小さな丸い泉の前に出るわ。
そのまわりに生える薬草なのですけど、それは少し変わった薬草でね。
今夜みたいな満月の夜にだけ、不思議な力を持つ薬草なの。
満月が一番高くに上がった時に、その薬草はうっすらと光を放つから『月光草』と呼ばれているのよ。
摘み取るのはその時じゃないとダメなのよ。
その時間を逃したら、ただの草になってしまうの。」
「えっ!月が一番高くに上る時?
ダメだよ、そんなの!」
運の悪い事に、彼女の願いは西の塔の魔女との待ち合わせの時間にしか出来ないことだった。
「おばあちゃん、悪いんだけど私達は…」
「……わかりました!」
「えっ!?」
サリーは驚き、私の顔をじっとみつめた。
「今夜、私が月光草を取ってまいりますよ。」
「レヴ!何言ってんだよ!
私達は……」
「……良いんだ。私もすぐに駆け付けるから、西の塔の魔女には君が会って話をしておいておくれ。」
「そ、そんなことでは……」
「レヴさん、あなた、何か大切な御用があるのではないの?」
「いえ、大丈夫です。ご心配なく。
サリーがきっとうまくやってくれますから。」
内心ではまずいことになったと考えてはいたが、見ず知らずの自分達に親切にしてくれた人の頼みを断ることは私には出来なかった。
灰色になったアマゾナイトの指輪を見ると多少気が滅入ったが、こんな大切な時に限ってこういう頼み事をされてしまうのも、きっと運命なのだろうと、私はあっさりと諦めた。
気難しいといわれる西の塔の魔女は、私が遅れたらおそらくもう話を聞いてはくれないだろう。
それでもやはり親切にしてくれた婦人への恩返しを優先すべきだ。
(……協力してくれたサリーには悪いが、また別の方法を考えよう。)
裏山はああ見えてもとても険しくて、私の足では登るのは難しいんです。
今までにも何人かに頼んだのですけど、誰も聞いては下さらなかったわ。」
「そんなこと、なんでもありませんよ。
その薬草はどこにある、どんなものですか?
詳しく教えていただけますか?」
「まぁ、嬉しい。
道なりに進めばそこに辿り着けるから、迷うことはないでしょう。
頂上近くまで登ると、小さな丸い泉の前に出るわ。
そのまわりに生える薬草なのですけど、それは少し変わった薬草でね。
今夜みたいな満月の夜にだけ、不思議な力を持つ薬草なの。
満月が一番高くに上がった時に、その薬草はうっすらと光を放つから『月光草』と呼ばれているのよ。
摘み取るのはその時じゃないとダメなのよ。
その時間を逃したら、ただの草になってしまうの。」
「えっ!月が一番高くに上る時?
ダメだよ、そんなの!」
運の悪い事に、彼女の願いは西の塔の魔女との待ち合わせの時間にしか出来ないことだった。
「おばあちゃん、悪いんだけど私達は…」
「……わかりました!」
「えっ!?」
サリーは驚き、私の顔をじっとみつめた。
「今夜、私が月光草を取ってまいりますよ。」
「レヴ!何言ってんだよ!
私達は……」
「……良いんだ。私もすぐに駆け付けるから、西の塔の魔女には君が会って話をしておいておくれ。」
「そ、そんなことでは……」
「レヴさん、あなた、何か大切な御用があるのではないの?」
「いえ、大丈夫です。ご心配なく。
サリーがきっとうまくやってくれますから。」
内心ではまずいことになったと考えてはいたが、見ず知らずの自分達に親切にしてくれた人の頼みを断ることは私には出来なかった。
灰色になったアマゾナイトの指輪を見ると多少気が滅入ったが、こんな大切な時に限ってこういう頼み事をされてしまうのも、きっと運命なのだろうと、私はあっさりと諦めた。
気難しいといわれる西の塔の魔女は、私が遅れたらおそらくもう話を聞いてはくれないだろう。
それでもやはり親切にしてくれた婦人への恩返しを優先すべきだ。
(……協力してくれたサリーには悪いが、また別の方法を考えよう。)