十五の石の物語
(……レヴ…あんた、本当に馬鹿だね…ほら、やっぱり似合わないよ。
こんな綺麗なドレス…あたしに似合うわけないんだよ…
……でも、嬉しかった…
本当に約束を守ってくれる人がいるなんて思わなかったからさ。

こんな綺麗なドレス、一生着ることなんてないと思ってたから。

ごめんよ……この前はあんなひどいこと言って…
本当はとっても嬉しかったんだ。
でも、びっくりして……「ありがとう」とは言えなかった…
……言ったらきっと泣き出してしまってただろうからね。)

大きな窓ガラスに映る自分の姿をしっかりとみつめ、サリーはそれを記憶にとどめようとした。
似合わないとても綺麗なドレスを着た自分の姿を…
涙でくしゃくしゃになった自分の顔を…



(……最高の思い出が出来たよ。)



しばらくするとサリーはまた元の服に着替え、ドレスを丁寧に包み直し、そこに短いメモを残した。
それから冷たい水でざばざばと顔を洗い、サリーはヴェールの部屋へ向かった。



「ヴェール、ちょっとつきあってくれるかい?」

こんな時間にどうしたのだろうとヴェールは怪訝に感じたが、サリーも先程の話できっとショックを受けたのだろう…
気分転換に外に出たいのかもしれない…
そう思い、ヴェールは黙ってサリーについていった。


サリーは、こんな状況の時に不自然と思える程楽しげにどこかに向かって歩いて行く。
近くなのかと思っていたら、知らないうちにかなり遠くまで歩いて来ていることにヴェールは気が付いた。



「サリーさん、どこまで行かれるつもりなのです?」

「うん、もうすぐだよ。」



いつの間にか空が白々と明け始めた。
ヴェールの胸に何とも言えない不安な気持ちが広がっていく。



サリーがヴェールを連れて行ったのはあの美しい滝だった。
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