十五の石の物語
「ここは本当に綺麗な所だね。
……朝陽があたって…ほら、あんなにキラキラしてるよ!
……本当に綺麗だ。」

サリーの瞳には涙が光っていた。
まるで水面と同じようにキラキラと…



「ほら、ヴェール!
これ、見て!」

サリーが唐突に差し出したものに、ヴェールは、顔を強張らせた。



「そ、それは、レヴさんの!!
しかし、その指輪はナイフで切ろうとしても指から離れなかったはずなのに、一体なぜ、それが……?!」

「ヴェール……あたしさ、昔、なんかの童話で読んだんだけどさ…
誰にも引き抜けない剣があって、それがある少年が抜くとあっさり引き抜けたんだ。
それは、その少年が選ばれた者だったからさ。」

「サリーさん、何のことを話されているのですか…?」

「……だから……私も選ばれた者だから引き抜けたってわけさ…
私の場合は星の石が願いを聞いてくれたからなんだけどね…」

「……まさか、サリーさん!!」

サリーはヴェールのみつめる前で、突然、アマゾナイトの指輪を飲み込んだ。



「サ、サリーさん、何をするんです!!」

「ヴェール……今までいろいろありがとう。
これからもレヴのことをよろしく頼むよ。
そして、必ず森の民に会っておくれよ…
幸せになっておくれよ…」

「サリーさん、何をおっしゃってるんです…?」

サリーはヴェールに微笑みかけながら、一歩ずつ、後ろに下がっていく。



「サリーさん、危ないですよ。後ろは……」

「もう大丈夫だって、レヴに伝えておくれ…
それと……ありがとうって……」

そう話したサリーの瞳には涙が溢れ……微笑みを浮かべると同時に涙の粒がこぼれ落ちた。



「サリーさん、何を…あっ!!」

…一瞬にしてサリーは身を翻し、滝壺に向かって走り出し、ヴェールの視界から唐突に消えた。

そして、わずかの間を置いてヴェールの耳に響いた大きな水音……



「サ、サリーさーーーーーん!!!」



気のふれたようなヴェールの絶叫が滝の音に虚しくかき消された。



14.銀星石…fin

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