十五の石の物語
(自分の命を捨てる時に、満足等出来るわけがない…!
きっと悔しかっただろう…
悲しかっただろう…
まだ、あんなに若かったのだ…どこも悪くはなかったのだ。
この世への未練がないわけがない…!)



「レヴさん…
サリーさんは本当に満足して逝ったのよ…」

振り返ると、そこには西の塔の魔女が立っていた。
私は、彼女に心の中をのぞかれてしまったことに気付いた。



「ごめんなさい…
でも、どうかサリーさんの気持ちをわかってあげて…
サリーさんはあなたの…」

「やめて下さい!
私にはこんなこと絶対に納得出来ない!!」



私は部屋を出て、外に飛び出した。
まだ夜が開けきらない暗い夜の中を歩いて行く。
周りの風景もまるで私の目には入らず、ただ黙々と足だけを動かし続け、やがて、たどり着いたのは、あの滝……
ようやく顔を出し始めた朝日を受けて、水面はこの前に来た時と同じようにキラキラと輝いていた。

あの時、ここにはヴェールと……そして、サリーがいた…
いつも通り、元気なサリーが……



「サリー…すまない…」

私はキラキラ輝く水面に近付いて行く…
一歩ずつ…ゆっくりと……



「およしなさい!」

不意に身体をつかまれ、私は後ろに引き戻された。



「あなた、せっかくサリーさんが助けてくれた命を無駄にするつもりなの!」

「………私にはもうこうするしか…」

「馬鹿なことを言わないで!」

「……馬鹿でもなんでももう良いのです。
私のために、大切な命を捨てた者がいる…
私はその人のために、この命を差し出すこと以外、何も出来ることはないではないですか…」

「それは違うわ。
あなたがサリーさんにしてあげるべきことは、これからを精一杯生きていくことなのよ!」

「……マダム…それは私には無理な話です。
私にはもう前を向いて生きていく気力はありません…
……サリーはもう二度と生き返ることは出来ないのですから…」

「レヴさん……」
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