十五の石の物語



(……とうとう、使ってはならない術を使うことになったのね。)

西の塔の魔女は小さな溜め息を一つ漏らし、革袋の中から、美しい黒曜石を取り出した。

ガラスのように艶やかな黒い石……



(……きっと私の身体はこの黒曜石と共に砕け散ってしまうことでしょう。
別に悔いはないけれど、命を賭けた術なのですから、今度こそ、皆、幸せになるのですよ。
運命の歯車がどうかうまく回ってくれますように……
さようなら…皆さん……短い間だったけど、あなた達に出会えて楽しかったわ……)

わずかに微笑んだ西の塔の魔女の瞳から小さな涙がぽたりと落ちた。



(一世一代の魔術よ…!)


西の塔の魔女は、目を閉じ、両手を組んで低く小さな声で呪文を唱え始めた。
命を賭けた究極の呪文を…!
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