十五の石の物語
「どこなのです?それは!」

「十字架を探すのです。」

「十字架……?」

西の塔の魔女の言葉は、あまりにも曖昧なもので、私は思わず聞き返してしまった。



「そうです……これ以上は私が言わずとも、きっと自然に導かれていくはずです。
あなたは今とても大きな運命の渦に飲み込まれている。
その渦は大きすぎて、あなたを今助け出すことは出来ないけれど、そのうちきっと抜け出す機会が現れます。
それまでは、流れに逆らわず、自然に身を任せるのが一番良い方法なのです。」

「……わかりました。
いろいろとありがとうございました。」

納得したわけではなかったが、きっとこれ以上は、何を訊いても無駄なような気がした。



「いいえ…手の込んだことをしてごめんなさいね。
あなたとはまたいずれ出会うことになるでしょう。」

「あ…あの…」

別れ間際になって、サリーがおずおずと前へ進み出た。



「つまらないことなんですが…」

「なぁに?」

「西の塔っていうのはどこにあるんですか?
だって、あの…あなたは『西の塔の魔女』って呼ばれているでしょう?」

西の塔の魔女は、静かに微笑みながら答えた。



「それは誰かが勝手に作り出したもの……私には家なんてあってもなくても良いものだから、決まった住処と言う物は持たないのですよ。
この世には、勝手に作り出されたものがうんざりするほどたくさんあるわね…」
西の塔の魔女はそう言って小さく笑った。
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