十五の石の物語
「ねぇ、ヴェールは外に出たことはないの?」

「ええ…生まれた時からずっとこの森にいるのです。」

「外の世界を見てみたいと思わない?明るい世界を見てみたくない?」

「それは……ほんの少しならあるのですよ。森の両端からは外の世界が見えますから。
……しかし、私は……」

「何だっていうのさ。
そりゃあはヴェールはあたし達とはちょっとは違うよ。
でも、とっても素敵だよ。
何も気にすることなんてないさ。」

彼は部屋の中を小さな明かりだけにしていたのだが、ある時、サリーが「外の世界はこのくらい明るいんだ!」と、ふざけて部屋にランプをたくさん持ち込んだことがあった。
明るい光に照らされた彼の肌は薄い萌黄色で、髪の毛は鮮やかな緑色だった。
彼は神経を病んでいたのでも、ジョークを言ったのでもなかったのだ。
信じられない想いだった。
私もサリーも呆気にとられ、ヴェールの姿をただただ見つめるばかりだった。

薄暗い部屋の中で彼に奇妙な違和感を感じていたのはこのためだったのだと、その時になって、私はようやく理解した。
しかし、その肌と髪の色は明るい所で見ると少しもおかしくはない。
おかしいどころか、サリーの言う通りとても美しい。
その上、彼は顔立ちも実はとても端正であることがわかった。
長い前髪に隠されてはいるが、上品で理知的な顔をしていた。



「サリーの言う通りだ。君は私達と比べて何も劣ってなどいない。」

「……ありがとう…」

「ねぇ!ヴェールも一緒に旅に出ない?」

「えっ!?」

サリーは、時々、突拍子もないことを言いだして私を驚かせる。
元々、この旅は私のための旅であり、サリーは巻き添えを食らったようなものなのだ。
物見遊山の旅ならいざしらず、この先、どんな災難が待ち受けているかわからない旅に、彼までも巻き込もうというのか?!
私は、サリーの神経が理解出来ず、その顔を呆れたようにじっとみつめた。
< 55 / 414 >

この作品をシェア

pagetop