十五の石の物語
「サリー、それはダメだ…」

私は心の中の思いを声に出した。



「どうしてさ?」

「ヴェールを危険な目に遭わせる可能性がある…
この旅がとても危険だということは君のカードも、そして西の塔の魔女も告げたではないか…」

「……あ…そうだったね…」

サリーの記憶は薄紙を剥ぐように少しづつ回復をしていたが、やはり今でも思い出せないことがあったり、忘れたりしていることが多い。



(……いっそ、なにもかも忘れてくれてたら、この娘を危険な旅に巻き込むこともなかったのに……)



「それほど危険な旅だとわかっているのに、やめることは出来ないんですか?」

「……おそらく。
賽はもう投げられてしまった。
私がやめようと思っても、運命がそれを許しはしないだろう…」

大袈裟なようだが、まさに私の心境はそんなものだった。



「あなた方は一体何のために旅をされているのですか?」

「……それはわからない…」

「まだ思い出せないのですか?」

「いや、そうではない。
本当にわからないのだ。」


私の返事におかしな感触を感じたのか、ヴェールは小さく首を傾げた。
それも当然のことだ。
私はこうして旅をしている経緯をヴェールに話した。
話すことで、万一、彼に何か影響が出てはいけないと思い今まで話すのを躊躇っていたが、私も彼の重大な秘密を打ち明けられていたこともあり、ついに話してしまったのだった。
ヴェールは、その話に酷く驚いている様子だった。
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