十五の石の物語
天気は悪くはないが、まだどこか肌寒い…
私は少し背中を丸めながら、市場への道を進んで行く。
さほど遠い道程ではない。
散歩にちょうど良い程度の距離だ。
市場が近づいてくるにつれ、どこからか来たのか急に人の数が増えてくる。
人の波に紛れても頭一つ抜け出してしまう長身で、背中まで伸びた銀色の長い髪を持つ私は、どこにいっても少なからず人々の注目を集めてしまう。

(いつものことだ…)

そうは思いながらも、私は出掛ける時にはその髪を一つに束ね、出来るだけ目立たないようにするのが常だった。
現実には、人ごみでは長い髪が邪魔だということもあるのだが…



市場は、すでに大勢の客でごった返していた。
思っていたよりもずっと多い客の数に、少し躊躇いを覚えたものの、ここまで来て帰るのも馬鹿馬鹿しい。
私は人の波に半ば流されながら、適当に品物を見てまわった。
私のことを知る者の中には、わざと高い値をふっかけてくる者もいる。
気が向けば、それがつまらないものだとわかっていても言い値で買ってやることもある。
そうかと思えば、安くても買わない場合もある。
すべてはその時の気分次第。

何かが欲しいというわけではなく、それはただの退屈しのぎ……私にとっては物も値段もどうでも良いことなのだから……



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