十五の石の物語
私はけっこう長身だが、ヴェールもその私とさほど変わらない位の長身だ。
二人の歩幅とサリーの歩幅は明らかに違う。
サリーが小走りになるのも当然のことだった。



「すまなかったな。これからはゆっくり歩くからな。」

「わかればよろしい!じゃ、お腹も膨れたしそろそろ行こうか!」

私とサリーはその場からさっと立ち上がったが、ヴェールの動きはやけに鈍い…
森に慣れたヴェールがこのくらいで疲れる筈もない。
森の出口に近付くにつれて、彼の迷いが大きくなっているのかもしれない。



「ヴェール…」

「……さぁ…行きましょう…」

ヴェールは何もない素振りでそう言った。

先程までとはうって変わり、私達はとてもゆっくりとした速度で歩いていた。
しばらく歩いていると、次第に森が明るくなっていくのが私にもはっきりと感じられようになった。
一歩進むごとにあたりは少しずつ明るくなっていく。
出口は近い…
久しぶりに見る太陽は、雲に覆われていたが、闇に慣れた目にはそれでもまぶしいくらいだった。



「ヴェール、大丈夫か…?」

「……はい」

「無理をするな。この陽の光は眩しすぎるのではないか?」

「……はい…でも、大丈夫ですから…」

彼はそう言ったが、彼の様子から無理をしていることは明らかだった。




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