十五の石の物語
苛立ちながらもまるで起きようとはしない私にサリーも諦め、仕方なく同じように横になった。

私は、外へ出る時間を少し遅れさせたかったのだ。
今はまだきっと明るい。
ヴェールの目には明るい太陽は辛いだろうし、彼の奇異な姿は目立ってしまう。
だから、私は暗くなるまでの時間稼ぎのためにこんなことをしたのだが、ヴェールの前では言いにくく、そのためサリーの怒りを買ってしまう羽目になった。
しかし、サリーは本当に眠ってしまったようで、それは私にとって好都合なことだった。



「やっとお目覚めか…」

サリーは、寝惚けているのか、驚いたような顔で私をみつめる。



「サリーのせいで、すっかり暗くなってしまったぞ…」

口ではそう言いながら、私は内心ではこの幸運を喜んでいた。



「ごめん!久しぶりにたくさん歩いたから、疲れてたみたいだよ。
……ヴェール、ごめんよ!」

「そんなこと…良いんですよ。」

「では、そろそろ行こうか。」



森の中程よりは明るいが、もう太陽はほとんど沈みかけている頃だろう。
この具合なら、森を抜ける頃にはあたりは暗くなっているはずだ。
木の間隔がだんだんとまばらになり、やがて森の出口らしきものが見えた。
それに伴い、ヴェールが落ち着きを失い始めた。
不自然な程、あたりをきょろきょろとしている。



「ちょっと待って!」

サリーはそう声をかけると、バッグの中ををごそごそして、中から一枚のスカーフを取り出した。



「ヴェール、ちょっとかがんでくれる?」

「何を?」

「いいから、いいから!」

サリーはヴェールの緑色の長い髪を束ね、スカーフで彼の頭を覆い隠した。



「気を悪くしないでおくれよ。
中には見かけだけで人を判断する馬鹿な奴らもいるだろうからさ……」

「……ありがとう、サリーさん…」

「じゃ…行こうよ!」

私はサリーの心遣いに感謝した。
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