十五の石の物語
私達はついには森の外へ踏み出した。
ヴェールにとっては生まれて初めての外の世界だ。
あたりはちょうど良い具合に暗くなっていた。
ヴェールが酷く緊張していることは誰の目にも容易に見て取れた。
強張った表情で、ヴェールは押し黙っている。



森を出てしばらく進むとちょっとした商店や民家が点在し始めた。
さらに進むと、古く小さなホテルがあった。



「今夜はあそこに泊まることにしよう。」

私を先頭に三人は中に入る。
人の善さそうな初老の男性が現れ、私達を部屋に案内してくれた。
私とヴェールが同じ部屋、サリーはその向かいの部屋だ。
こじんまりした清潔な部屋だった。
空腹を訴え、私は部屋に三人分の食事を依頼した。
部屋の窓から見える夜空には月や星が明るく輝く。
そして、少ないが街灯も……
同じ夜でも森の中よりずっと明るい夜だった。



「普通の人々はこんなにも明るい夜の中で暮らしているのですね。」

「…そうだ。
そして、これからは君もこのような明るい夜を過ごすようになるのだ。」

「……そう…ですね…」

躊躇いがちにそう答えたヴェールはいつまでも窓の外を眺め続けていた。



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