十五の石の物語
「お急ぎなのですか?
私の帽子と眼鏡で良ければお貸ししますが…」
そう言いながら、主人は奥から自分の帽子と眼鏡を持ち出してきた。
私が探していたのはヴェールのための帽子と黒眼鏡だった。
彼の緑の髪が隠れるように、出来るだけつばの広い帽子がほしかったのだが、主人の差し出した帽子はベレー帽だった。
眼鏡も老眼鏡らしきものだ。
残念ながらそれでは役には立たない。
「ありがとうございます。お気持ちだけで結構です。」
私は店主に挨拶をし、ホテルを後にした。
外に出たものの、それからどうするかはまだ決めていなかった。
やはり町まで買いに行くしかないのか?
しかし、わざわざ行ってみて目的のものが売ってなければ目もあてられない。
せめて、主人が貸してくれるといった帽子がもう少し違ったものならば…と、残念な想いを胸に私は歩き始めた。
(…そうだ!!)
私は不意に思い着いた考えに、躍るように通りへ飛び出した。
つばの広い帽子をかぶっている者や黒眼鏡をかけた者に譲ってくれるようにと直接交渉することを思いついたのだ。
ところが、通りを行き交う人影はごくまばら。
しばらく待っていても、帽子をかぶった人物はおろか、人間自体があまり通らなかった。
私が諦めかけた頃、ようやく黒眼鏡をかけた男が私の目の前を通りがかった。
私の帽子と眼鏡で良ければお貸ししますが…」
そう言いながら、主人は奥から自分の帽子と眼鏡を持ち出してきた。
私が探していたのはヴェールのための帽子と黒眼鏡だった。
彼の緑の髪が隠れるように、出来るだけつばの広い帽子がほしかったのだが、主人の差し出した帽子はベレー帽だった。
眼鏡も老眼鏡らしきものだ。
残念ながらそれでは役には立たない。
「ありがとうございます。お気持ちだけで結構です。」
私は店主に挨拶をし、ホテルを後にした。
外に出たものの、それからどうするかはまだ決めていなかった。
やはり町まで買いに行くしかないのか?
しかし、わざわざ行ってみて目的のものが売ってなければ目もあてられない。
せめて、主人が貸してくれるといった帽子がもう少し違ったものならば…と、残念な想いを胸に私は歩き始めた。
(…そうだ!!)
私は不意に思い着いた考えに、躍るように通りへ飛び出した。
つばの広い帽子をかぶっている者や黒眼鏡をかけた者に譲ってくれるようにと直接交渉することを思いついたのだ。
ところが、通りを行き交う人影はごくまばら。
しばらく待っていても、帽子をかぶった人物はおろか、人間自体があまり通らなかった。
私が諦めかけた頃、ようやく黒眼鏡をかけた男が私の目の前を通りがかった。