十五の石の物語
(良い香りだ…)



運ばれてきたのは、私の大好きなダージリンティだった。
部屋を見る限りでは、とてもじゃないが繊細な性格には見えないが、彼の煎れたお茶は予想外にうまいものだった。



「良い茶葉だ…
しかも、とても上手にいれられている。」

「おっ!わかるかい?これでも、俺はお茶だけにはうるさいんだ。」

「わかりますとも…」

「嬉しいねぇ…!」

思わぬ所で共通点がみつかり、私達の会話は一気に和やかな雰囲気になった。



「……あんたのその指輪、アマゾナイトだろう!」

カップを持つ私の指のアマゾナイトを見ながら、男は声をかけた。



「よくご存じですね。」

「おふくろがこういう石が好きでさ…」

そういうと、男は奥の部屋から大きな宝石箱を持ってきて私の前に差し出した。
その中には、無造作にたくさんの石のアクセサリーが入っていた。



「ほら、これがアマゾナイト!」

そう言いながら、男は箱の中から青いブローチを取り出した。



「これがアメジストで…こっちがスモーキークォーツで…」

男が石を取り出しながら、一つ一つの名前をあげていく。

ふと見ると、男が腕にブレスレットを付けているのが目に止まった。
それは、透き通るような青紫の石…



「それは…?」

「えっ?あ、これかい?
これはアイオライト。
けっこう綺麗だろ?
良かったら、これも持っていくかい。
石、好きなんだろ?」

「いえ…
ただ、とても綺麗な石だな…と思ったのです。」

「そうだろ?
俺もそう思って、衝動買いしちまったのさ。
ま、俺の場合はいつも衝動買いなんだけどさ。」

不思議と心ひかれる石だったが、あまりそんなことを言っていると、また気前良く「持っていきな!」と言われそうだと思い、私はそれ以上その石の話をするのを控えた。
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