十五の石の物語
目の前に無造作に並べられた石を見ているうちに、私の脳裏にあることが思い浮かぶ。



(…そうだ!!)



「もしかして、あなたはキャストライトという石はお持ちじゃありませんか?」

「キャストライト…キャストライト…確か、聞いたことはあるような気がするが……どんな石だっけ?」

「それが…私も見たことはないのですが、なんでも黒い十字のラインの入った石だそうで…
一緒に旅をしている友人がその石を探しているのです。」

「……その名前、確かに聞いたことはあるんだよ。
十字のラインねぇ…
…う~ん…思い出せない。
……すまねぇな。」

男はキャストライトの記憶を手繰り寄せようとしてくれたが、残念ながら思い出すことはなかった。



「いえいえ…あなたには大変お世話になりました。
しかも、こんなにいただいてしまって……
本当にありがとうございました。」

「気にすることはないぜ。あ、そうだ。キャストライトのこと、思い出したら連絡するよ。
あんた、旅人だろ?
どこに泊まってんだい?」

「通りを一筋入った…」

「あぁ、レオのホテルだな。わかった。」

男は、私がまだ少ししか話さないうちに理解して頷いた。



「しかし、戻ったらじきに発つ予定なのです。」

「そうかい……じゃ、仕方ないな。
気を付けて旅を続けてくれよ。
この町に来ることがあったら、またいつでも立ち寄ってくれよな!」

「ありがとうございます。」

私は男に礼を述べると、急いでホテルに引き返した。



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