十五の石の物語
「ずいぶん昔…まだ俺がガキだった頃、おふくろに石を売りに来た男がいた。
その男が言うには、この石は、緑色の髪と肌をした木の精霊のお守り石だということだった。
なんでも、この町からずーーーっと南の森の中にその精霊たちは住んでいるんだと。
その男は精霊達に何度も会ったことがあると言っていた…でも、そんな話は作り話だと思ってたんだ。
緑色の髪と肌…そんな者達がいるなんて信じてなかったんだが……
今頃になってこんな所で本物に会えるなんてな…!
だけど、待てよ。
その本人が石を探してるってことは…一体どういうことなんだい?」

その話を聞いたヴェールの顔は青ざめているように見えた。



「ヴェール、どうかしたのか?」

「母は…母はよく言ってました。
自分は暖かい森の中で育ったから、何年経ってもここの寒さには慣れないと…」

「…ということは、君のお母上はその南の森から来られたということか…?
そこには君達の種族がたくさん住んでいると…」

「私にもよくわかりませんが……今のお話を聞く限りでは、おそらくそうなのではないかと…」

男がここに来たことにも驚いたが、まさか、ヴェールの親についての情報が聞けるとも思ってはいなかった。
それにしても、親についてあまり知らないようなヴェールの口ぶりが奇妙に感じられた。



「そういえば、ヴェールの父さんや母さんはなんでその森を出たの?」

「……それは…」

ヴェールの表情がにわかに曇った。
私はサリーに首を振って、「聞くな」と合図した。
ヴェールがそのサインを見たのかどうかはわからないが、自ら「聞いてください」と言いながら、少しずつ自分の身の上について話し始めた。


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