十五の石の物語
「大丈夫だってば!
それに、私達には『十字架』しか手がかりがないんだし、ヴェールが行かなくても私達はそこに行くよ!」

「その通りだ。十字の導きは今の所そこしかあてがないのだからな。」

それは本当のことでもあったが、ヴェールを同じ種族に会わせてやりたいという気持ちから言った言葉でもあった。
そうすることが、彼の心の傷を癒すことにもなると思ったから。



「その森について詳しいことをご存じありませんか?」

「それが、残念ながらよくは知らないんだ…なんせ作り話だと思ってたくらいだからな。
こんな事なら、もっと詳しく聞いておくんだったな。」

「そうですか。
でも、南の方の大きな町へ行けば、なんらかの情報が聞けるかもしれません。
本当にありがとうございました。
あなたにはすっかりお世話になってしまいました。」

サリーとヴェールも口々に礼を述べた。



「そんなことはどうでもいいさ!
それよりも、これからすぐに発つのかい?」

「えぇ、行き先が決まったからには一刻も早く行きたいのです。」

「ちょいと役に立ちそうなものを渡したいから、家に寄ってってくれよ。
どうせ、町へ行く時に通る道なんだし。」

「わかりました。」

私達は荷物をまとめ、ホテルを発った。
あたりはもう薄暗くなっており、帽子と黒眼鏡のおかげもあってヴェールの容姿のことは誰にも気付かれずにすんだ。
私達はそれほどたいそうなことだとは考えていなかったが、今回の男の反応を見て、人々がヴェールの容姿に過剰な反応を示すことがわかった。
もしかしたら、帽子や黒眼鏡だけでは不十分なのかもしれない。



< 81 / 414 >

この作品をシェア

pagetop