お兄さんと【完】

ふと、私の上に太陽の光を遮るものが重なって、私は影の中に包まれた。


と同時に、膝の上の紙袋を見ていた私の視界の中に、立ち止まった靴が見えた。


もちろん私は顔を上げてみる。


その靴の持ち主が星くんじゃないのは下を見ていたときから明らかだった。


だってその靴は高いヒールのついた女物のブーツだったから。


「あなた、前に星くんと一緒にいた子だよね?」


あ...。


この人は確か...。


私に向かって発せられたその言葉は、見覚えのある女性からの言葉だった。

星くんがクリスマスツリーとシャンデリアを見に連れて行ってくれたときに、星くんの腕に手を回していた製菓女子大の女性。
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