お兄さんと【完】
あんまり会話のないまま車は走り続けた。
でも全然その沈黙は気まずいものじゃない。
その静けさと星くんの車の中の香りに包まれて、朝早くに起きた私は車の揺れに眠気を誘われた。
「稀那ちゃん。」
うとうとしてるだけだったのか、もう半分くらい寝ちゃってたのか、曖昧な意識の中で私のことを呼ぶ声が聞こえる。
「...ん...。」
重たい瞼を開けると、真っ直ぐ向けられた星くんの視線とバッチリ目が合った。
「わぁっ!!」
慌てて今の状況を把握するために外をキョロキョロと見渡す。
どこかの駐車場...だよね?