お兄さんと【完】
そのまま大学を出た私たち。


ファイルひとつを提出しに行っただけなのに、私は何も知らなかったお兄さんのことを少し知った。


でもそれは、あんまり知りたくなかったかもしれない。


かずちゃんのお兄さんっていう存在は、私にとってはそんなに遠くない関係だけど、年齢の差とか人気のある性格とかが私から遠い存在のような気にさせた。


この日はそんなことを考えてるせいで、お兄さんとの時間をあまり楽しむことなく時間が過ぎて行った。


映画もお兄さんが私好みのものを優先的に選んでくれたけど、お兄さんにとってはつまらないんじゃないかと気が気でなかった。


映画館を出ると、もう夕方の時間帯。


「ちょっと付き合ってくれるかな?」


「?...はい。」
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