紺色夜話
私服姿の勝平を認識するのに、銀子は15秒程かかりました。




「あ、え~と……、持田さん」




銀子の反応にガクッと力が抜けた勝平は、栄治を椅子から押しのけるとそこに座りました。




そして深く溜め息をつくとカウンターに突っ伏して
「“持田さん”だなんて……、もう。
 何度も“勝平”って呼んでるクセに」
と恨めしげに銀子を見ます。




「こらこら、アプローチしている段階から馴れ馴れしいと、嫌われるぞ」




志郎が勝平に水を出しながら言います。




“アプローチ!? アプローチされてたの? 私……”と銀子は目が真ん丸になりました。




「あ、すみません」




勝平はのっそりと身を起こすと、水を一気に飲み干しました。
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