NANON

あくむ

いつもの日常

ヴーヴーッ…

携帯のバイブが部屋の中で鳴り響く。

受信:イツキ
おまえ今日入学式だろ？
今日は大学午後からだから俺が出席するよ。
ちゃんと家で待ってるんだぞ。
車で迎えに行くから！


イツキお兄ちゃんからか。
少女は携帯のディスプレイを見て少しため息をついた。

イツキとは少女の従兄弟で4つ年上の大学2年生だ。
兄妹のいない少女に、いつもやさしく、まるで本当の兄のように接してくれる。
だか、イツキの愛情は少々行き過ぎたところがあるため、たまに重荷を感じる時があるのだ。

少女はあまり感情をおもてに出さない。
むしろ、表現の仕方が分からないと言った方が正しいのか、
とにかく彼女の変化はわかりにくい。
なので、ため息をついたとしても周りからは感じとれるかとれないかほどの微妙な変化なのである。
それもこれもすべては幼い頃に受けた親からの虐待が原因なのだが…。