- π PI Ⅱ -【BL】
オオカミが全てを聞いていた。
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ひやりと冷たい風が頬に当たり、俺は目が覚めた。
頭が重い……手足が痺れて、酷い二日酔いの気分だ。
重い瞼をこじあけてゆっくりと目を開けると、目の前にぼんやりと陣内の姿があった。
古い椅子の背もたれに、手をついて反対向きに腰掛けている。
「よぉ。お目覚めか?」
陣内はうっすらと笑った。
まだ頭がふらふらする。一定に定まらない視界に渇を入れるよう頭を振ったが、余計に視界が歪んだだけだった。
後ろに回された手首に冷たい感触があった。
ちょっとだけ動かすと、ガチャガチャと乾いた音が鳴った。
覚えのある感触―――手錠だ……
ぼんやりと滲む視界で辺りを見渡すと、ここがどうやら使われていない古い倉庫であることが分かった。
何か分からないけど、錆び付いた機械がいくつも置いてある。
俺は細い柱の下に座らされ、手を後ろで拘束されていた。
「―――……陣内…やっぱりお前だったのか」
途切れ途切れに言うと、陣内はふっと冷笑を浮かべた。
「やっぱりって?」
「とぼけるなよ。今度の連続強盗事件―――お前が犯人だったんだな」
俺が睨み上げると、陣内は薄笑いを浮かべて軽く肩を竦めた。
「そうだけど?」
乾いた笑い声が、倉庫に響いて俺の背中にぞくりと嫌な汗が伝った。