- π PI Ⅱ -【BL】
「DNA鑑定は毛髪だけ一致してれば物的証拠は十分。
体液の詳しいDNA鑑定をする前に逮捕、起訴される。警察も早く事件に終止符を打ちたい筈さ」
陣内はつるりと無表情で答えた。
「そんな……じゃ、無実の人間が犯人になるってことかよ!」
俺が怒鳴ると、陣内はナイフを床に突きたてた。
「警察組織ってのはそうゆうとこだよ!
真犯人が誰かなんて誰も興味がない。いつだって検挙率だけを上げるだけに必死だ!
俺が憧れて止まなかった世界は―――こんなにも薄汚く、汚れきった組織だ!!」
陣内の悲痛とも呼べる叫び声が倉庫内に響いた。
陣内―――……
「この汚れた世界で、あの人……橘警視だけは光輝いていた。
腐りきった警察組織の中で、唯一正義を求め紛争する彼は―――俺にとって神そのもの」
陣内の言っている言葉は分かる。あいつはいつだってまっすぐで、自分の信念を決して曲げない。
それが間違っていようと常に堂々と、あり続ける。
俺もそんな周が好きになった。
「その人に―――お前が橘警視の愛を一身に注がれて、可愛がられてるから!」
陣内の怒鳴り声が暗い倉庫に響き渡った。