- π PI Ⅱ -【BL】
そんなことで…
「そんなことで関係のない人たちを傷つけたのかよ!!」
俺が怒鳴り返すと、陣内は眉間の皺を深くさせて手を上げた。
パンッ
思い切り頬を叩かれて、眼の裏が一瞬だけ白くなる。
陣内は力強い手で俺の胸座を掴むと、
「そのいい子ぶってるところが気に食わねぇんだよ!そうやって正義を振りかざして、あの人に取り入ったんだろ!
お前のそうゆう考えヘドが出るね!」
はっ!と笑って、陣内は俺の胸座から手を離した。
打たれた頬が熱を持ったように熱い。口の端で嫌な鉄の味がした。
叩かれたときに切ったらしい。
「……いい子ぶってるわけじゃねぇよ。俺は、世の常識を言ってるんだ。周を手に入れたいんなら、もっと正々堂々と戦えよ。
こんな卑怯なことをしてもあいつは手に入らない!あいつが喜ぶはずがない!」
気丈に睨み上げると、
「黙れ!」とまたも頬を殴られる。
刺す様な痛みに目の奥がちかちかする。
陣内は俺の髪をぐいと乱暴に掴むと前を向かせた。そして目の前にナイフを突きつける。
ドキリとして目を瞬くと、陣内はナイフを俺の首元に這わした。
「安心しな。すぐには殺しゃしねぇよ。十分にいたぶってから殺してやるから」
俺がごくりと喉を鳴らすと、陣内はその反応を楽しむかのようにナイフの先でワイシャツのボタンを弾く。
「何……」
「お前がもっとも屈辱と感じる方法でゆっくりいたぶってやるよ」
陣内の細い指が俺の首元をさらりと撫でていって、俺の首の後ろにぞわりと鳥肌が立った。