- π PI Ⅱ -【BL】
周はドアを開けると、よろよろと中から出てきて、
「おい!蜘蛛女っ!!貴様何をしてくれる!俺様の美しい顔に傷がついたらどうしてくれるんだ!!」なんて運転席を見て怒鳴っている。
え…顔!?そこを心配する!?
ってか、1,000万近くするベンツの前が大破してますけど!!
何かボンネットからわずからながら煙が出てるし…
「あら。ハクがついていいじゃない」なんて相変わらずマイペースな刹那さんが、ぴんぴんしたまま運転席から出てくる。
「ハク!?んなもん求めてねぇ!!俺様に必要なのは“美”のみだ!!」
あのぉ…喧嘩ならあとでやってくださいよ…
そんな気持ちで唖然と二人を見ていると、
「…ぃてて。思い切り打った…」と言い頭を押さえながら、後部座席から三好が出来てた。
「み、三好!?」
びっくりして目を開くと、
「桐ヶ谷!大丈夫かっ!!」と三好も驚いて声を上げた。
俺のすぐ横で目を丸めていた陣内が、
「…な、何故この場所が分かった!」と、たじろいだように一歩後退する。
「陣内、ヒロを見くびっていたようだな。ヒロが置いていってくれたんだよ。このIDカードをね。後ろにはお前を差し示すJのイニシャルが書かれていたよ。
まぁ見つけたのは三好だが」
そう言って俺の証明写真が入ったIDカードをかざし、周は三好を振り返った。
陣内は慌てて俺を見下ろす。
俺はちょっとだけ笑った。
「そうゆうこと」俺が埃を払ったふりして置いていったのは、俺の証明写真が入ったIDカード。
「だけど居場所まで分からないはずだ!お前のケータイは電源を切った。GPSだって使えないはずだ!」
「それはあたしが追跡したわ♪あなたのケータイの電波を追っていったの」
刹那さんがにっこり笑って陣内を見る。
刹那さん……あなたならやってくれると思ってた。
俺は安堵のため息を吐いた。