- π PI Ⅱ -【BL】
パトカーに乗り込むのを見届けると、急に気が抜けて俺は周に寄りかかった。
周の香り……爽やかで、どこか甘くて……すごく落ち着く…
「ヒロ!大丈夫か」
慌てて俺の両肩を支える周に、俺は力なく笑い返した。
「…ごめん、ちょっと気が抜けた…」
今更ながらさっき殺されそうになった恐怖がじわりじわりとやってきた。
陣内にはああ言ったけど、本当のところはどうか知らない―――
周が来るのが遅れていたら、もしかして俺は生きて周に再会できなかったかも。
こうして周の温かい腕に抱きしめられることもなかったかも。
それを考えると、足元からぞっとする何かが這い登ってきそうで眩暈を起こしそうだ。
周は俺の肩を握る手に力を入れると、
「ヒロ、お前何であんな危険なことしたんだ」と低く聞いてきた。
まるで詰問口調に、俺の肩がびくりと震える。
「刑事さん、桐ヶ谷は…」とすぐ近くに居た三好が言い訳のように俺に助け舟を出してくれる。
周は険しい視線で口を開きかけ、また怒られるのかなぁと思い、俺はうな垂れていた。
無理もない。何の相談もなしに、勝手に行動した俺が完全に悪い。
だけど…
俺の予想とは反して周は俺を力強く抱きしめた。
びっくりして顔をちょっと上げると、
「お前に何かあったら、と思うと俺は生きた心地がしなかった」
と、周の真剣でちょっと震える声が降ってきた。