- π PI Ⅱ -【BL】
三好はポケットに手をつっこんだまま遠い目をして口を開いた。
「俺……きっとずっと前から桐ヶ谷が好きだった。
でもそれは友人として、って思い込むようにしててさ。だって変だろ?男が男を!って……」
同意を求めるように三好はちょっと俺を振り返ったが、俺は眉を寄せて首をちょっと横に振っただけだった。
三好はちょっと悲しそうに笑った。
「……お前、やっぱ優しいよな…。刑事さんから聞いた。俺が疑われてても、お前だけは頑なに俺を信じてくれたって。俺……それを聞いてすっげぇ嬉しくてさ……」
はにかむように笑って三好は僅かに目を伏せた。
伏せた目尻にほんのわずか涙の粒が光っていた。
「いくら女と付き合っても、何て言うの?心に隙間があって、どんなに一緒に居ようと、抱き合おうと、その隙間が埋められない。
いっつも寒々としていて…付き合った女の子たちには悪いけど…
とにかくそんなんが嫌で、いっつも数ヵ月後に俺から別れを切り出してた。
でもお前と居ると、その隙間が不思議と埋まってさ。
何かすっげぇ楽しいんだ。満たされてるっての?」
三好は冗談っぽく恥ずかしそうに笑ったけど、俺は笑わなかった。
だって三好の気持ちが痛いほど分かるから。
俺も周に会って、周と居ると幸せで―――嫌なことを考えられないほど振り回されて、それでもそれが楽しくて。
小さなことも笑えて、幸せを感じれて、あったかくて。
それを満たされてるって言うのかな……ううん、俺の場合―――
周で溢れてるって言うべきか。
(もう、はみ出るぐらい鬱陶しいこともあるケド)
「桐ヶ谷―――俺、認めるのが怖かった……けど
お前が好きだ」
決意を固めるように、三好がまっすぐに俺を向いた。