- π PI Ⅱ -【BL】
俺は三好をまっすぐに見返して、そして周の手をきつく握った。
「ありがとう。でも俺、こいつが好きなんだ。こいつじゃないとダメなんだ。
ごめんな」
そう返すと、三好はちょっと悲しそうに笑った。
「人生初の一大告白が、あっけなく終わるとはねぇ。しかも相手は男だ」
呆れよたように三好が肩をすくめ、それでも満足そうに笑った。
「言えて良かった。ちょっとすっきりしたし。
また夫婦喧嘩したらいつでもこいよ。離婚したら俺が貰ってやるぜ?」
三好がにやりと笑い、両手をCome onと広げる。
いやいや…
「生憎だが、喧嘩の予定もなければ離婚もない。
俺様がこんなに可愛いヤツを手放すと思うか?」周が挑発的に笑って、俺の肩をきつく抱き寄せた。
むせかえるような爽やかで甘い香りに包まれ、俺は心の底から幸せだった。
―――筈なのに…
その後の取調べとか、事情聴取とか…
怪我の手当てや薬の検査とかで病院に連れて行かれ、帰り着いたのは次の日の午後。
幸いにもコーヒーに混ざっていたのは軽い入眠剤で、もっとも微量だったため体に悪影響はない。
コーヒーを出した刑事も、陣内に用意され、それを出しただけだから全く事情を知らなかったらしい。
ミニ周おおかみは証拠とか言って没収されちゃったし、今日も周は事件の後処理とかで帰りが遅くなるって言ってた…
いつの間にか刹那さんは姿を消してたし(忘れてたけど…)―――
ってか!!今さら気付いたけど!!
あそこに集まってた刑事たち!あの会話(俺たちが夫婦だってこと)を聞いて何とも思わなかったわけ!!
まぁお陰で周が地方に飛ばされるという事態はなさそうだけど。
あなどれん。警察組織……
それでも……
「周―――…寂しいよ。早く帰ってきて」ぽつりと漏らすと、
「ホントに?♪」どこからともなく周の声が聞こえてきて、
バタン!
そろりと顔を向けると、玄関の扉が勢いよく開いた。
な……何かこれって前にもあったような―――