- π PI Ⅱ -【BL】
熱烈な求愛を避けながら、それでも何とか風呂に入り、ベッドにもぐりこむだけでちょっと疲れていた。
俺…大丈夫か??本番まで持つかな。なんて考えていると、隣から周のむき出しの腕が力強く伸びてきた。
俺の顎をそっとなぞると、口元の傷にそっと触れる。陣内に殴られたとき切った傷だ。
「痛いか?」なんて聞かれて、俺は僅かに首を横に振った。
「怖い思いをさせてすまなかったな」
周の真剣な声が耳元で囁かれて、ぞくりとうなじが逆立つ。
「平気」ちょっと笑って周の方を見ると、僅かな明りに照らし出されてた周は少しだけ悲しそうな笑みを浮かべていた。
俺の頬を大きな掌でそっと包み、親指で撫であげると
「…こないだは、悪かった。俺はお前が怖がるかと思って…ちょっとそうゆうのを控えようと思ってたんだ…」
触れられるがくすぐったくて、俺はちょっとだけ笑みを漏らした。
「何だよ、珍しくしおらしいな」
って言うか遠慮してたの!?俺のケツを触りまくってたくせに!
「俺だって反省している。俺はお前に泣かれると弱いんだ。それに嫌われたらどうしようとか、結構考えたし」
「お前が?」僅かに笑うと、
「そりゃ考えるさ。さすがに三行半を突きつけられるかと思ったぜ」と周は軽く肩を竦めた。
「三行半は夫が妻に離縁を申し付けるもんだ」俺が軽く笑って返すと、
「そうだったな」と周も口元で笑みを浮かべて、俺の首の下に腕を入れてきた。
引き寄せられるように抱きしめられると、深いキスをされる。
周の舌の感触を、体温を……いっぱいに感じて、それだけで幸せになれた。
唇が離れると、妙に照れくさくて俺はちょっとだけ目を伏せた。
周の手が耳の後ろに伸びてきて、わずかにくすぐる。
くすぐったいのと心地いいのとで、わずかに目を開けると、
「お前はホントに可愛いヤツだな」と周の低くて優しい―――甘い声が俺の脳内を優しく痺れさす。