- π PI Ⅱ -【BL】


「研修ってめんどくせぇよな。昨日の…営業部長だっけ?話長すぎじゃない?しかもあれヅラじゃね?」


と、俺の想像を覆すほどの口の悪さ。


だけどきさくで、話しやすい。ついでに明るいところも気に入った。


「俺も思ってた。絶対ヅラだよな。しかも同じ話を何度もさ~」


「うん、うん。営業先で会った美人受付嬢の話だろ?エロおやじだな。そんなこと誰も聞いてねぇって」


「ホントに。ああはなりたくないな」


なんてクダラナイ会話今でも覚えている。あのとき桐ヶ谷は屈託なく笑っていた。


あいつが笑うと、まるでそこに光が当たったように明るくて、太陽みたいにあったかくなった。


キラキラ輝いているように見えて、俺にはない純粋さを感じたんだ。





そのあと桐ヶ谷とは何かと気が合って、良く飲みに行く仲になった。


意外。


桐ヶ谷は可愛い顔して結構…いやかなりイケる口だな。ザルだ。


飲むは飲む。しかもビールだとか焼酎だとかおっさんの飲み物ばっか。


でもある日知った。桐ヶ谷が一番好きなのはワイン。しかも赤だ。


それを聞いてから、俺はワインの旨い店を雑誌やネットで調べまくった。


その頃はまだ桐ヶ谷が好きだと自覚してなかったから、俺…何やってんだろう。なんて自己嫌悪に陥ったっけ。


でもせっかく調べたし、誘ってみるか?


なんて思っていると、またも意外な事実を知ることになる。


「俺、宮下さんと付き合うことになったんだ~♪今日デートなんだワ。また誘って?」


無情な一言に、俺は灰化…


誘うか!!ボケっ!


結局そのワインの店は桐ヶ谷とは一度も行っていない。


俺はなんだか無性にむしゃくしゃして、数ヶ月は合コンに明け暮れた。


その内何となく気の合う女を見つけ、何となく付き合うことにした…


けれど、頭の中で考えているのはいっつも桐ヶ谷のことだった。




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