- π PI Ⅱ -【BL】
こいつが神出鬼没だってことは知ってたけど…
周は素早く俺の座るテーブルに回り込んできて、俺に笑いかけると三好をちらりと見た。
「桐ヶ谷の知り合い?」と三好が聞いてきて、俺はその質問にどう答えるべきか悩んだ。
周のことだから「ヒロの夫だ」なんて答えそうで、俺は慌てて席を立ち上がった。
だけど周は、
「ヒロの友人みたいなものです。失礼。私はこうゆう者でして」
と素早く名刺を取り出して、三好に挨拶している。
友人みたいなもの?まぁあながち外れてはないけど。
何か…拍子抜け…
周って時々常識人なんだよな。ほんとに時々…一ヶ月に一度の割合いだけど。
ま、こっちとしては助かるが。
「警視庁捜査一課…警視!?」名刺を覗き込んでいた三好が目を剥いた。
まぁ普通に生きてりゃ一生縁のない職業だよな。
「よろしく♪」なんて爽やか笑顔を浮かべ、手なんかを差し伸べている。
「あ、はい!こちらこそ」三好も慌てて手を差し伸べた。
何か……イヤかも…
周が他の男に、たとえ握手だとしても触れるのが。
なんてじっと睨んでいると、
ぎゅぅううう
「いてっ!いででで!」
そう叫んで、三好が握った手を慌てて離した。
「よ・ろ・し・く♪」
周の言葉の裏にすっげぇ棘を感じる!顔には爽やか過ぎる程の笑顔を浮かべているが、それが逆に
怖えぇ。
色んな意味で俺の背中にぞくりと悪寒が走った。