- π PI Ⅱ -【BL】
でも石鹸かぁ…
石鹸だけなのに、そんな肌って…今は男だってエステに行く時代だぜ?
それなのに、未だに石鹸って…
そう言えば桐ヶ谷って頭のてっぺんから足先まで石鹸のいい香りがするんだよな…(←変態っぽい)
嫌味じゃない程度に爽やかで、清潔そーな香り。
あのイケメン刑事も、ついでに言うとあの謎の美女もいい香りがしてたけど、
俺は桐ヶ谷のこの香りが好き。
前を歩く桐ヶ谷が足を止めて、ちらりと振り返る。
「何だよ。会社行かねぇの?」
と顔には明るい笑顔。
俺が告白したって言うのに桐ヶ谷は全然気持ち悪がらない。
って言うか結婚相手が男だから何も言えないと言った方が正しいのか。それとも免疫がある??
それでも前と何の変わりもない態度に、俺はちょっと嬉しい。
だけど
ふいに視界に飛び込んでくる、桐ヶ谷の左手薬指…
プラチナの光り輝くリングを目にすると―――
ズキリ、と胸が痛くなる。
あいつの笑顔も、あいつの香りも、あいつの体温も奪って行くあのイケメン刑事に
俺は言いようのない嫉妬心を掻きたてられる。