- π PI Ⅱ -【BL】
「………俺、今日は帰ります…」
二人だけの絆に太刀打ちできないことを思い知って、俺は僅かに肩を下げた。
一気に気が抜けて脱力した。
「ああ。酔ってるし、明日になればたぶん普通に戻ると思うから、そう心配するな」
刑事はいつもどおりの口調になって俺を見上げてくる。
その視線にさっきまでの険しいものはなかった。
やわらかい視線で俺を見ると、少しだけ口元を緩めた。
「確かにお前と飲みに行ったヒロにも責任があるが、
あいつは―――お前のことが好きなんだよ。
それに悔しいがお前は俺より信用されてるしな」
好き―――……
「ああ、って言っても友達としてだ。勘違いするな」
刑事が真顔で軽く手を上げ、
「分かってるよ!そんなこと!(泣)」俺は思わず喚いた。
俺は!友達としてじゃなくて、それ以上に好きになってほしいの!!
「だけど今日ので信用ガタ落ちだ。明日っから避けられたらどーしよ…(再び泣)」
「それはそれで俺としてはラッキー♪だな。しかし今日は俺もソファで眠るしかないか。ヒロジも奪われていったし。寂しい独り寝だ」
なんて言って刑事は嘆く。
「自業自得だろ?ってか“ヒロジ”って何だよ。あのヒツジのことか?」
「ああ、ヒロヒツジの略だ。あいつに似てるだろ?」
言われて、う゛~ん…俺は首を捻った。
似てる……かな?
確かにあの黒くて大きなおめめとか、にっこり笑みを浮かべている口元とか……あぁそう言われれば確かに!似てる!!
いやいや、しっかりしろ!達矢!!
この変態刑事に感化されるな!