- π PI Ⅱ -【BL】
……と、まぁそんな具合で会話を打ち切り、俺は帰る間際に寝室をそろりと覗いた。
刑事は「何を言っても無駄だぜ?どうせ明日には忘れてる」なんて言ったけど、一言侘びを入れていきたかった。
「桐ヶ谷~…もう寝てる…?」
遠慮がちに布団の中にもぐりこんだ桐ヶ谷に声を掛けると、やっぱり反応はなかった。
怒ってるのかな??
恐る恐るベッドを覗き込むと、桐ヶ谷は―――
心地よさそうに寝息を立てて―――ぐっすり眠っていた。
しかも大事そうに狼のぬいぐるみを抱きしめて。
可愛い……
またも俺の胸がキュンと鳴る。
そう言えば、前にこの狼のことを“周おおかみ”とか言ってたな。
あいつのことが……あの刑事のことがそんなに好きなんかよ……
改めて実感した。
心臓がズキリと鳴り、それでも
「あれ?あのヒツジはどこへ行った…?」キョロキョロと見渡すと、床に放り出されていた。
しかも、頭に咲いた花がむしりとられて、ボロボロ…頭部がかわいそうなことになってるし…
ヒツジを拾い上げると、
「俺はヒツジじゃねぇ!」
とベッドからうなり声みたいな声が上がった。
びっくりして目を丸めるも、桐ヶ谷は眠ったまま固く目を閉じている。
何だ…寝言か……ってかどんな夢見てんだよ…
ほっと安堵して、それでも―――…桐ヶ谷の無防備な寝顔を見て…
やっぱお前ヒツジだよ。
なんて思わず納得。
何てぇの?桐ヶ谷ってフワフワしたイメージがあるんだよなぁ。
抱きしめたら気持ちよさそう。
そんな思いで、桐ヶ谷の寝顔を見ていると、形の良い額にかかっている前髪が流れて額が露になっていることに気づいた。