- π PI Ⅱ -【BL】
完全に酔っ払ってるなぁ。
俺が近づいてもまるで起きる気配がないし。
なんて思って顔を近づける。
桐ヶ谷の白い額、滑らかな肌、黒い艶やかな髪―――
どれもがやっぱりきれいで、俺は思わずそこに顔を近づけた。
桐ヶ谷の寝息を間近で聞いて―――額にそっと口付けを落とす。
「ごめんな。怖がらせるつもりはなかったんだ。
でも俺、気付いたよ。お前―――あの刑事のことを
愛してるんだな。
困らせるようなことして
ごめん」
それは最初で最後の口付け。
だけどそれは
“失恋”の冷たい味がした―――
はじめて桐ヶ谷の一部に唇を寄せると、あの爽やかな石鹸の香りをいっぱいに感じた。
もうこの香りをこんなに間近に感じることなんて二度とないだろう。
忘れないように。
俺の中で消えてしまわないように―――……
俺は大きく息を吸い込んだ。